ネットショップにおける利用規約・プライバシーポリシー・特商法表示の複雑な関係

「ネットショップを開設するとなると、なにやら色々な法律文書を準備しなければいけないらしい?」

「ほかのネットショップを見てみると、『利用規約』『プライバシーポリシー』『特定商取引法に基づく表示』が掲載されているところが多いけど、これらのうちいずれかを欠いているサイトもある?」

「逆に、これらに加えて『配送ポリシー』や『返金ポリシー』という文書が掲載されているサイトもある?」

「これらの文書の関係性がいまいちわからない。そもそも全部作らないとだめなの?」

この記事では、そんなお悩みに、弁護士が回答します。

目次

よく見るタイトルの法律文書

利用規約

利用規約は、EC・ネットショップに限らず、多くのウェブサイトで掲載されているのを目にしたことがあると思います。

利用規約とは、顧客とネットショップの間でトラブルが起きたときのルールを事前に定めておくものです。

たとえば・・・

  • 顧客が指定した住所に商品を送ったのに受領してもらえなかった場合どうするか?
  • その後連絡がつかなくなった場合いくらの違約金をとるか?
  • 顧客が代金の支払いを遅延したとき、いくらの遅延損害金をとるか?
  • 万が一顧客と裁判になってしまったとき、どこの裁判所で裁判をするか?


まだまだたくさんありますが、このようなショップと顧客の間で生じうる典型的な問題について、利用規約を定めておかなければ、「法律(民法)に書いてあるルールに従う」ということになります。

ところが、法律の専門家ではないネットショップの運営者や顧客が、「民法に書いてあるルールに従う」といわれても、どこに何が書いてあるか皆目検討もつかないでしょう(ちなみに、民法の条文は第1条から第1050条まであります)。

また、民法はきわめて抽象的に一般的な私人間の取引ルールを定めているに過ぎず、ネットショップ特有の事項が定められているわけではありません。

そのため民法のルールを適用するといっても、人によって適用の解釈が異なる可能性があり、法律に詳しくない人同士でそのような議論をすると、水掛け論になってしまう可能性があります。


そこで、ショップと顧客の間でのルールを事前に決めておくのが利用規約、というわけです。

以上のような趣旨の文書ですので、利用規約を作ることは、法律上の義務ではありません。利用規約を作らなくても、法律違反ではありません。

しかし、安心安全なショップ運営をするため、ショップを防衛するために、利用規約の整備は必須といえますし、実際、ちゃんとしたネットショップは必ず利用規約を整備しています。

プライバシーポリシー

プライバシーポリシーは、ショップと顧客の関係のうち、特に顧客の個人情報の取扱に関する部分だけを切り出して規定したものです。


なぜ個人情報の取扱いに関する部分だけを切り出すのかというと、個人情報の取扱いについては「個人情報保護法」という特別な法律があり、その中で、個人情報収集の目的や範囲について具体的に定めて顧客にわかりやすい場所に掲示するよう定められているからです。

つまり、プライバシーポリシーを作ることは法律上の義務であり、プライバシーポリシーを作らずに顧客の個人情報を収集することは違法、ということになります。

そしてネットショップは商品の配送等の関係で必ず顧客の個人情報を扱うことになるため、ネットショップにおいてはプライバシーポリシーの策定は必須、ということになります。

この点に作成が任意である利用規約との大きな違いがあります。

特定商取引法に基づく表示

特定商取引法に基づく表示、とはなんとも長ったらしい名前ですが、これは読んで字の如く、「特定商取引法」という法律に従った文書です。

特定商取引法とは、ネットショップなどの通信販売の際に、顧客が不当な被害を受けることがないように、事前にショップ側に情報開示の義務等を課した法律です。

そして、特定商取引法では、商品の販売価格や送料の取扱い、代金の支払時期や商品の引渡時期などの特定の重要な事柄を、わかりやすい位置に掲示するように定められています。

これが特定商取引法に基づく表示です。

これもプライバシーポリシーと同じく法的な義務であり、ショップがその掲載を怠った場合は、違法ということになります。

そもそも分けて書かないといけないの?

以上、よく見かける「利用規約」「プライバシーポリシー」「特定商取引法に基づく表示」の概要を説明してきました。

では、これらの文書は、分けて書かなければいけないのでしょうか?

答えは「NO」です。

極論すると、3つの文書を一つに統合して掲載することも違法ではありません。

ただし、プライバシーポリシーと特定商取引法に基づく表示は、それぞれ掲載に関する根拠法が存在するため、何がどこに書かれているかわからない状態になってしまうと、法律の要請を満たした状態かどうか、顧客や監督官庁からみて判断がつきにくくなってしまいます。

また、そのような背景もあり、これら3種類の文書については、分けて掲載することがネットショップ業界の中でも一般的になっています。

そのため、特別な理由がない限り、これらの文書は分けて作成することを推奨します。


なお、利用規約と特定商取引法に基づく表示は、関連性が強い文書です。

なぜなら、利用規約はショップと顧客の間の一般的なルールを定めるものであり、商品の所有権の移転時期や代金の支払時期といった基本的な事項は、本来であれば利用規約内に定めてもおかしくないものだからです。

しかし、利用規約にも、特定商取引法に基づく表示にも、同じような事項が重複して記載されているとなると、顧客からみるとわかりにくい状態になってしまいます。

そのため、重複する事項については、「特定商取引法に定めるところによります。」「利用規約に定めるところによります。」などとして、できるだけ重複を減らし、顧客から見てわかりやすい文書とすることが推奨されます。

たまに見るタイトルの法律文書

特にShopifyのショップなどで、「配送ポリシー」「返金ポリシー」などといった文書を目にすることがあると思います。

これは、別の記事でも詳細に説明していますが、日本の法律に特段の策定根拠を有するものではありません。

そのため、日本の法律上は、作っても、作らなくても、構いません。

ただし、海外のショップなどでは掲載事例が多いことや、返金や配送については顧客にとっても重大な関心事項であるため、余力があれば積極的に作成を試みても良いかと思います。

他方で、そこで規定する内容は、利用規約や特定商取引法に基づく表示の記載内容と重複もしてくるため、上記のとおり、できるだけ記述の重複がない状態を目指すことが推奨されます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。利用規約、プライバシーポリシー、特定商取引法に基づく表示の少々複雑な関係性がご理解いただけたのではないかと思います。

是非これら必須の規定を整備して、安心安全なショップ運営に努めてください。

なお、これらの法律文書の作り方がよくわからない方は、法律文書自動生成ジェネレーターKIYAC(キヤク)を使えば、いくつかの簡単な質問に答えるだけで、わずか数分でプライバシーポリシー、ネットショップ用の利用規約や特定商取引法に基づく表示を作ることができますので、利用してみてください。

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