顧客からクーリングオフを主張されたらどうすればいいの?!

「イメージしていた商品と違った」

「サイズが合わない」

「注文ボタンを押したときと事情が変わったのでいらなくなった」

EC・ネットショップを運営していると、実に様々な理由で(あるいは何の理由もなく)、顧客から商品の返品の主張がされます。

そんなときによく顧客が口にするのが「クーリングオフ」ということばです。

クーリングオフの主張を受けたとき、ネットショップ側はどのように対応すればよいのでしょうか?

弁護士が解説します。

目次

クーリングオフって何?

ネットショップを運営している方は勿論のこと、そうでない方でも「クーリングオフ」ということばは一度は聞いたことがあると思います。

しかしその意味はあまり正確に理解されていないかもしれません。

クーリングオフとは、「いったん契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、契約を再考できるようにし、8日以内であれば何の理由もなく無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度」です。

そもそもネットショップにクーリングオフは適用されない

クーリングオフということばは有名なので、ネットショップは、商品の返品を求める顧客から、「クーリングオフする」という主張を受けることがしばしばあります。

しかし、ネットショップにはクーリングオフの制度は適用されません。


そもそもクーリングオフの制度はなぜ存在するのでしょうか。

クーリングオフは、「訪問販売」と呼ばれる販売形態に適用されるものです。
たとえば、高額な英会話教材セットを押し売りするといった販売形態をイメージしてください。

訪問販売は、消費者が望んでいないにも関わらず、いきなりセールスマンが自宅に押しかけてきて、無理やり商品を販売することがあります。

このような自体に備えて、消費者に「本当にその商品がいるのか、再考させる期間を設け、消費者を守ろう」という趣旨で生まれた制度です。

他方で、みなさんが運営するネットショップのように、インターネット上で商品を販売する場合(法律上、これを「通信販売」といいます。)、消費者側が、わざわざネット検索をして、みなさんのショップにたどり着き、自らの意思で商品を買い物かごに入れ、決済ボタンをクリックしています。

通信販売の場合には、消費者自らが自らの意思で商品を選択しているため、先程説明したような「消費者に再考する期間を与える」という趣旨が当てはまりません。

そのため、クーリングオフは、ネットショップには適用されず、「クーリングオフする」という顧客の主張は、法的には間違っていることになります。

法定返品権?!

たしかにネットショップ(通信販売)にはクーリングオフは適用されないのですが、これとは異なる「法定返品権」と呼ばれる制度が適用されます。

これは、ネットショップで購入した商品について、商品の到着後8日以内であれば、売買契約の申し込みの撤回、あるいは売買契約の解除を認める制度です。


これは、インターネット販売では、商品が実際に届いてみないとサイズや色合いなどがわからず、「思っていたのと違った」という事態が一定数生じることに鑑み、消費者を保護するために作られた制度です。

なんだ、結局クーリングオフと同じじゃないか、と思われるかもしれませんが、クーリングオフと法定返品権には決定的な違いがあります。

法定返品権は特約で排除できる

それは、「法定返品権は特約で排除できる」ということです(クーリングオフは排除できません。)。


利用規約や特定商取引法に基づく表示などのわかり易い場所に、あらかじめ「返品ができない」ことを明確に記載しておくことで、そのネットショップには、法定返品権の制度は適用されなくなります。

これは、訪問販売(押し売り)と通信販売(ネットショップ)の性質の違い、消費者保護の必要性の違いによるものです。

法定返品権を主張されたときの対応

顧客からクーリングオフや法定返品権の主張を受けたときは、まずはご自身のショップの利用規約や特定商取引法に基づく表示を見返し、「返品を認めない」という旨の記述があることを確認しましょう。

そして、顧客に対しては、ネットショップではクーリングオフは法律上認められないこと、通信販売で認められる法定返品権も、特約によって排除されていることを説明しましょう。


勿論、法定返品権を排除しているにも関わらず、顧客の要望を聞き入れ、特別に返品・交換に応じることもあると思いますが、これは法律上の制度とは別の次元で、ショップの評判を守る観点からの経営判断ということになります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

まずはクーリングオフと法定返品権の制度の違いをしっかりと理解したうえで、具体的な対応を決めましょう。

なお、法定返品権を排除した利用規約の作り方がよくわからない方は、法律文書自動生成ジェネレーターKIYAC(キヤク)を使えば、いくつかの簡単な質問に答えるだけで、わずか数分でネットショップ用の利用規約を作ることができます。

是非、利用規約を整備して、安心安全なネットショップ運営に役立ててください。

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